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児童養護施設

児童養護施設の実際について

皆さんの知らない児童養護施設について、

知りたいことがわかるを目指します。

定義

児童養護施設は、保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設です。(児童福祉法第41 条)

まとめると、さまざまな理由(虐待、親の病気、離婚、貧困等)で家庭で養育することが不適切または、不可能だとみなされた子どもが生活をする場所といったところになります。

児童養護施設は、県や市などの公的な機関が運営している施設もありますが、その多くは社会福祉法人などの民間の施設になります。

日本にはいくつの児童養護施設があるか?

児童養護施設は全国に約600か所あります(令和5年度)

その形態は大きく分けると3種類あり、同じ家で暮らす子どもの人数によって下記のように分かれます

・大舎約40%(1舎20名以上)

・中舎約12%(1舎13名~19名)

・小舎約32%(1舎12名以下)

・その他16%

(※平成26年度全養協調べ)

※現在施設の形態は、小規模化に向かっています。できる限り少数の子どもを多くの大人が見守ることができるように里親支援やファミリーホーム、小規模児童養護施設への移行が推進されています。

施設で生活している子どもの数は?

入所児童数は約23,000人(定員約30,000人)になります。施設入所児童数は、里親委託やファミリーホームの入所人数が増える中、減り続けています。また、定員の30,000人については、ずっと横ばいで、児童虐待の通告件数が増えるなか定員については変わっていません。

(令和5年度現在)

子どもの年齢は?

基本的には2歳からおおむね18の子どもが生活をしています。18歳以降は措置延長という制度があり、今までは22歳までと制限が設けられていて、22歳になると自動的に施設から出なければいけませんでした。しかし、現在は児童福祉法が改正され、2024年に年齢制限は撤廃されます。必要に応じて何歳まででも施設で生活することができるようになりました。

(措置延長するためには、子どもの同意と児童相談所が延長が妥当だと認める必要があります。)

2.入所の理由は?

1、 虐待(約50%)

身体的、心理的、性的、ネグレクトの4つに分類されています。虐待の背景として、親も自身の親(子どもからすると祖父母)から同じように虐待を受けて育っており、自分が育てられた方法と同じ方法で我が子に養育を行ってしまう『世代間連鎖』が原因の一つと言われています。もちろん、虐待を受けた人が必ず子どもに虐待をするわけではありません。

また、子どもに不幸になってもらいたかったり、嫌いだから虐待をするということはほとんどなく、養育の方法がわからないために虐待になってしまうケースも少なくありません。

例えば、

好き嫌いなくご飯を食べてほしい(バランスよく栄養を取ってほしい)という思いは、子どもの親であれば、理解できると思います。しかし、その思いから子どもがご飯を食べなかった時に叩いてしまったり、ご飯を食べさせなかったりという極端な行動に出てしまう。

思いは良い

行動が悪い

ということが起こってしまう。子どもを思ってやっているつもりだったのに、結果的にはその行動は虐待となり、子どもを傷つけてしまうということが起こりうるのです。

虐待の内訳は?

身体的虐待 41%

性的虐待 4.5%

ネグレクト 63%

心理的虐待 27%

複数の虐待を受けている子どもも少なくありません。また、この数値は入所時点で分かっている虐待についてのため、入所後にわかった虐待についてはカウントされていません。実際の数字はもっと多いと思われます。特に性的虐待は発見が難しく、他の先進国と比べて明らかに低い数字のため、実際はこの数倍の数になるのではないかと言われています。

※虐待の内訳(2つ以上の虐待を受けている場合重複しているため、合計が100%を超えています。)

2、 両親の精神疾患(約15%)

両親の精神疾患が原因で、子どもの養育が十分にできないケースもあります。これは、精神疾患そのものが悪いというわけではなく、どうしても自分で動けない時に、その代わりを補ってもらう社会資源とのつながりが不十分な場合が少なくありません。社会資源とどのようにつながって、子育てができるかがとても重要になってくるケースです。

日本の課題は、社会全体で子どもを育てる意識の低さや制度が構築されていない事だと重います。

3、 経済的な理由(約5%)

経済的な理由の一つは離婚です。離婚をきっかけに収入が減ったり、0になる事も少なくありません。これは男女どちらが親権をとるかはあまり関係なく、今までと同じような生活を一人ではできなくなるため、収入を得る方法を変えざるを得なくなるからです。一般的には、収入が安定するまで施設入所をするという短期間の入所になる事もありますが、住む場所や仕事など大きく環境が変わることで長期化することもあります。

ここでも重要なのは、一人で育てることになったときに、祖父母や友人、社会資源などの協力がどの程度受けられるかによって、入所の期間が大きく異なってくるということです。

3.どんな専門職が施設で働いているのか?

児童養護施設では、子どもの生活を支える職員だけでなく、食育の面から支援する栄養士、家族との関係調整を行う家庭支援専門相談員、虐待で傷ついた心のケアをする心理士など様々な専門職がチームとして働いています。下記に簡単にまとめます。

〇児童指導員…親に代わり、子どもの養育全般のお世話をする。

〇家庭支援専門相談員…保護者への支援を通して、親子関係の改善を促します。

〇自立支援担当職員…子どもが自立するための支援や施設退所後のアフターケアを行う。

〇里親支援専門相談員…里親委託の推進や地域の里親の支援を行います。

〇個別対応職員…子どもの個別の支援を充実させるための職員。

〇心理療法担当職員…虐待を受けて心に傷を負ったの心理面の支援を行う。

〇栄養士…子どもへの食育や栄養面での支援を行う。

〇事務員…施設の運営面を担当する。

4.児童養護施設の暮らしは?

児童養護施設は、同じ住居で生活する子どもの人数によって、大舎制、中舎制、小舎制と呼ばれます。基本的には、一緒に生活する子どもの人数が少ないほど、個々の子どもに合わせた生活が可能になります。より家庭に近い形での生活になり、子どもの人数が多いほど集団生活、寮生活に近い形になります。

生活については、それぞれ、地域の幼稚園、小学校、中学校、高等学校に通っています。

お金について

小遣い、誕生日プレゼント、クリスマスなど多くの家庭と同じようなイベントもあります。

被服費などもあるため、ボロボロの服を着なければいけないということもありません。

ただし、これらは国が基準を決めるわけではないので、施設に入る予算をどのように分配するのかは各施設に委ねられます。

よく聞くのは、

A施設は、小遣い5000円、クリスマス10000円

B施設は、小遣い7000円、クリスマス5000円

など、施設によって変わってきます。

これは、そのほかの様々な費用にも言えます。

また、携帯電話の所持についても、施設によって持てたり持てなかったり、高校生から、中学生からなど、その基準はバラバラです。令和6年度より、通信費という名目で、中学生以上の携帯電話費用について施設で出すことができます。ただし、携帯電話の所持については、各施設によってルールは違います。

一つの例として

中学1年生から携帯電話を持てます。ルールとしては、22時には預かります。学校に行っていない日は使えません。中学生は3000円、高校生は5000円が携帯電話代として支給されます。あとは、携帯電話を持つ前にSNSの使い方などの講習を受けることなどが必要です。

といったようなことが、各施設ごとで異なったルールとしてあります。

旅行・娯楽について

私の働いている施設では、誕生日には好きな食べ物が食べれますし、キャンプやスキーなど旅行にも行きます。

釣り好きな職員がいれば、子どもを釣りにつれて行きますし、お笑い好きな職員が子どもをお笑いライブに連れていくこともあります。

習い事も子どもがやりたいということをできる限りやらせてあげています。水泳、空手、野球、サッカー、書道、プログラミング、歌、ダンスなど、様々です。ただ、送り迎えが必要なことが多いため、その都度職員の送迎が必要になるところで調整が必要なことがあります。

ゲームも自分で買うことができます。使い方については、職員と相談の上で決めていきます。

日々の生活では、子どもの友人が施設に遊びに来たり、公園で一緒に遊んでいたりということもあります。友人宅に泊まりに行く子もいます。

一般的に、施設のイメージは閉鎖された空間で、子どもの自由が制限をされている様子を思い浮かべられがちですが、実際は地域に開かれており、施設によっては、新築の一軒家を改装して施設にしているところもあります。遊びや習い事もなども一般家庭と変わりません。

まとめ

皆さんの児童養護施設のイメージと実際の児童養護施設は一致していたでしょうか?

現在は、子どもの権利擁護が重視されて、一昔前のような劣悪な環境での養育はほとんどありません。より家庭に近い形での養育が推進されており、『施設だからできない』を減らしていこうと各施設が努力しているところです。

ただ、まだまだ施設によってその差は大きく、いわゆる『施設ガチャ』と呼ばれるような状況があることも否定できません。

まずは、一人でも多くの人に、児童養護施設がどんなところなのかを知ってもらうことから初めていきたいと思います。

日本の未来を担う、子どもの将来について一緒に考えてもらえればうれしいです。

では、バイバイ(^^)/